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  ほぼ週刊メールマガジン「果物&健康NEWS」

第154回
 研究者、ジャーナリストと食生活改善運動

  
 

□□■ 果物&健康NEWS Vol.154 ■□□
   ■   2007年6月 8日(金)   ■


みなさん、こんにちは!
特集は「研究者、ジャーナリストと食生活改善運動」です。
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毎日くだもの200グラム以上食べましょう!
公式ホームページは http://www.kudamono200.or.jp
果樹農業は未来を拓く! Do! our BEST.


:::■ メニュー ■::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 ◇ くだもの健康豆知識:モモ
 ◇ 今週のレシピ:モモ
 ◇ 研究者、ジャーナリストと食生活改善運動
 ◇ 文献紹介:重要な科学情報は見つからない
 ◇ 読者から:カナダ糖尿病協会の話題について
 ◇ 「食事バランスガイド」のテレビCMの紹介
 ◇ 長州小力が踊る!「食事バランスガイドソング」
 ◇ 品種紹介:モモ「白秋」
 ◇ 文献紹介:バランスのよい食事は肺疾患のリスクを下げる
 ◇ 読者から:梅ジュースの作り方
 ◇ 読者から:もう一つの梅の日
 ◇ 文学の中の果物:落合町山川記(林芙美子)
 ◇ 「食を考える国民フォーラム」の開催について
 ◇ 今日のフォト
 ◇ 編集部より



□ くだもの健康豆知識:モモ

 モモな古来から薬用として使われています。未熟のモモを干したものは碧桃干(ピータオカン)、モモの種は桃仁(タオレン)といいます。

 最近、モモの抽出物の中にアルツハイマー病と関係するアセチルコリンエステラーゼ阻害物質が含まれていると報告されました。

 アルツハイマー病の発症には神経伝達物質が関与しています。その1つにアセチルコリンがあり、アルツハイマー病ではアセチルコリンの分解が進んでいることが知られています。

 そのため、アセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼの働きを妨げると症状が改善されると考えられています。

 まだ、研究初期のデータなので何とも分かりませんが興味深い論文です。

【文献】
Suh, S. J. et al.: Pharmacological characterization of orally active cholinesterase inhibitory activity of Prunus persica L. Batsch in rats. J. Mol. Neurosci., 29: 101-107. (2006)




□ 今週のレシピ:モモ

○ フレッシュモモの焼きタルト
  ジューシーな果汁がスコーンにしみこみます。スコーンがなければ、カステラやバタークッキーで代用出来るそうです。

材料 (直径18cmタルト型)
 モモ(かためのもの) 2個、スコーン 2個、無塩バター 70g、グラニュー糖 50g、溶き卵 大さじ1杯など

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.zennoh.or.jp/Zennoh/TOPICS/APRON/0507/06.htm

○ イチジクとモモのグラタン
 旬のフルーツ料理です。

材料(5人分)
 モモ 1個、イチジク 5個、ブドウ・キウイフルーツ・ザクロ 適宜、白ワイン 180mlなど

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://www.nhk.or.jp/kanazawa/bangumi/hyakumangoku/
kitchen/2006/06-09-26.html





□ 研究者、ジャーナリストと食生活改善運動

 健康に関するニュースはメディアで広く取り上げられています。テレビやラジオなどでは、医師や研究者が健康や治療について語る番組も放送されています。また、インターネットでも多くの人が健康についての情報を検索しています。こうしたメディア環境の中で食生活改善運動を進めるにはどうしたらよいのでしょうか。

 アメリカで推進されている食生活改善運動「5 A DAY」は、大きな成功を収めています。「5 A DAY」運動が10周年を迎えたとき、10年間の評価が行われました(文献)。その中で、メディアにおける情報発信者である研究者とジャーナリストと「5 A DAY」運動との係わりについて報告しているので紹介します。

 アメリカでは健康や医療に関する研究が査読された研究雑誌にかなりの量、報告されています。また、一般メディアでも毎週、毎月、健康に関する情報が掲載されています。しかし、研究者とジャーナリストでは、発表の目的が異なるため、両者間で十分なコミュニケーションがとれない場合があります。

 研究者が発表する論文は、それ以前に行われていた研究を前提とした実証的なデータを積み重ねたものです。そのため、食習慣の改善や健康に関する包括的な理解が進むことは稀です。ただ一つの研究が、健康に対する決定的な結論を導き出すことは滅多にありません。研究報告の結論は限定的で、大きなテーマのすべてを説明することは出来ません。1つの実証的な研究だけで大きなテーマを解釈しようとすると、曖昧な説明となるのが普通です。研究者は、大きなテーマの中の一部を担当し、限定された条件下で実験を行うように訓練されています。

 一方、メディアでは、新しさに報道価値があるため、新しさを強調しようとします。また、読者が興味を引く珍しさや「ブレークスルー」などの情報を求めています。科学論文は実証的な報告であるため、大きなテーマを直接的に解釈出来ないことがしばしばありますが、ジャーナリストは、研究者のそうした説明の曖昧さに対してあまり寛容ではありません。

 ジャーナリストは、明快な結論を読者に提供する訓練を受けています。そのため、ジャーナリストの質問に対して研究者は回答に困り、「希望的観測」を頻繁に述べることになってしまいます。こうした両者の違いを知っておくことが食生活改善運動における研究論文の取り扱いやメディアへの情報提供を行うときに重要です。

 以上のような研究者とジャーナリストの違いを前提として「5 A DAY」のメッセージのデザインが検討されました。特に、メディアに運動を継続的に取り上げてもらうためには定期的に、徹底的に発信する情報を練り直し、魅力的に再構成して提供する必要があります。また、食生活改善運動のメッセージはシンプルであることが重要です。果物と野菜を毎日5サービングのメッセージ「5 A DAY」は極めてシンプルです。そして、食生活改善運動における健康に関する情報は、量とともに質も重要です。

 このようにして、メディアと長期的なパートナーシップを作り上げることが運動成功のために大切であるとしています。

【文献】
5 A Day for Better Health Program Evaluation Report:
http://cancercontrol.cancer.gov/5ad_exec.html




□ 文献紹介:重要な科学情報は見つからない

 多くの人が情報を見つけるためにインターネットを利用しています。しかし、重要な科学情報は、ウェブサイト上で見つけるのが難しいことが分かりました。

 イギリス・オックスフォード大学の研究によれば、主要な科学情報サイトはGoogle検索で上位30番目までに表示されないことが分かりました。

 研究では、社会的に重要な気候変動、HIV/エイズ、インターネットなど6項目についの科学情報がウェブ上でどう扱われているかを調査をしました。その結果、ウェブ上の情報は中立的ではないことが分かりました。上位にあるいくつかのサイトには、他のものよりアクセスしやすくする特定の構造がありました。

 そして、この構造はGoogleなどのサーチエンジンによる検索結果に影響を及ぼしています。そのため、ウェブ上の情報は、明らかではない方法で「勝者と敗者」が決まってしまい、内容に基づいていないと研究者らは考えています。

 情報は「目に見えること」が重要ですが、現状では、気候変動などの研究結果を探している人が、最も評価された研究に遭遇することは難しいことが分かりました。

【文献】
The World Wide Web of Science: Emerging Global Sources of Expertise
http://www.esrcsocietytoday.ac.uk/esrcinfocentre/
viewawardpage.aspx?awardnumber=RES-160-25-0031





□ 読者から:カナダ糖尿病協会の話題について

 食品の話題を楽しく読ませていただいています。
 最近カナダ糖尿病協会の話題が何回かあったのでその感想です。なぜ、カナダの話題なのですか?日本でも糖尿病は増えその対策をすすめたり、日本糖尿学会でも食事療法を具体的に説明していることは既にご存じと思います。

 また、厚労省は食事バランスガイドなるものを作成し、住民への周知をしていると思います(理解しやすいかは別問題)。体格・体質等が異なる事をふまえても、なぜ、カナダの話題を詳細に載せられているのか疑問です。(O)

【編集部より】
 日本を含む世界7カ国が参加した共同研究、ハワイに移住した日本人の研究などから、糖尿病、ガン、心臓病、脳卒中、高血圧などの疾病の発症には、人種間差異などよりも食生活など生活習慣と強く関係していることが分かりました。そのため、こうした疾病を生活習慣病と定義づけています。

 国連は、国際糖尿病連合の働きかけに応えて、糖尿病対策の強化を求める国連決議を採択しました。国際糖尿病連合では、予防と治療のための指針を明らかにしていますが、その中でアメリカ、カナダ、イギリスの取り組みを紹介しています。

 食事摂取の指針である食事バランスガイドでは、科学研究の結果に基づき我が国では初めて果物の摂取目標値が定められました(注:参考)。

 以上のように、生活習慣病予防のために世界各国が協力して研究や生活改善運動が行われています。そのため、本メルマガも食生活の改善を通じた生活習慣病予防にかかわる各国(我が国の情報も含む)の情報を提供しています。


参考:食事バランスガイドの中の果物
 主材料の重量がおおよそ100gであることからこの量を「1つ(SV:サービング)」に設定しています。ミカン1個がこの「1つ分」に当たります。子供と女性、高齢者は、1日に果物2つ(例:ミカン2個)、ほとんどの男性は、毎日果物2〜3つ(例:リンゴ1個とミカン1個)です。




□ 「食事バランスガイド」のテレビCMの紹介

 にっぽん食育推進事業の一環として、6月1日から6月30日の『食育月間』に、米を中心とした「日本型食生活」の普及・啓発を図るため、幅広い年齢層を対象に「食事バランスガイド」を活用したテレビCMを放映します。

 CMは、下記のサイトからご覧いただけます。
 http://www.maff.go.jp/balance_check/index.html




□ 長州小力が踊る!「食事バランスガイドソング」

 長州小力さんが歌って踊る「働く男性のための『食事バランスガイド』〜そのからだ ヤバイっすよ」は、下記のサイトからご覧いただけます。

http://nipponsyokuiku.net/2006BG/media/m004.html
試聴は下記のサイトです(WMVファイル、約4分) 。
http://mmsc.ruralnet.or.jp/syokuiku_wmv/song_dansei.asx




□ 品種紹介:モモ「白秋」

 「白秋(はくしゅう)」は、「う−9(白桃(はくとう)×布目早生(ぬのめわせ))」と「C2R19T182(米国から導入の系統)」を交雑して出来た品種です。

 収穫期は8月中旬頃で、大きさは300-400gとなる大玉系統の品種です。果皮の着色は少なく、全体に白っぽい外観です。果肉は白色で果汁が多く、糖度11-13%位で食味良好です。

「白秋」の花と果実の写真は下記のサイトで見られます。
http://ss.fruit.affrc.go.jp/kajunoheya/ikuseihinsyu/
data/hinsyu/cu-hakusyu.html





□ 文献紹介:バランスのよい食事は肺疾患のリスクを下げる

 アメリカで42,917人の男性を対象に調査が行われた結果、果物や野菜、全粒穀類、魚を中心とした食事を摂取していると肺気腫や気管支炎など重大な肺疾患のリスクが半分になることが分かりました。

 一方、西欧型食生活(精製穀類、肉類、デザート、フレンチフライなど)は肺疾患のリスクをかなり高めることが分かりました。果物、野菜、全粒穀物、魚には抗酸化物質など様々な成分が豊富に含まれているためではないかと研究者らは考えています。

【文献】
VARRASO, R. et al.: Prospective study of dietary patterns and chronic obstructive pulmonary disease among US men. Thorax, Online 15 May, 2007. [doi: 10.1136/thx.2006.074534]




□ 読者から:梅ジュースの作り方

 温暖化で益々暑くなる夏を健康でおいしい梅ジュースで乗り切りましょう。

 サッカーをやっている子供にいつも持たせていたのが家内の手製梅ジュースです。このジュースは市販のジュース類と違い口の中に甘味が残らずさっぱりとします。健康にも良く、子供はコレを好んで水筒に入れてサッカーの練習に行きます。友達もこのジュースを楽しみにしているみたいです。特に夏の暑いさなかは梅独特の酸味が口内をサッパリとさせます。特に暑い夜飲むと体がスーとして寝床にはいれます。

 作り方は至って簡単。梅1キロに対し、砂糖700〜800g、甘いのがよければもう少し増やしてもよい。よく洗い、水分を拭き取ってから、梅酒と同サイズくらいのビンに梅、砂糖と交互に入れ、2〜3週間置く。瓶に入れる前、梅にフォークか爪楊枝で傷を付ければ早くエキスが出ます。

 3週間以上そのまま置いておくと発酵するので、梅とジュースに分け、ジュースは沸騰寸前まで火を入れる。それを小瓶に分けて保存。ジュースを飲むにはスプーン2〜3杯をグラスに入れ水で薄めて飲みます。

 梅はつぶしてジャムにします。とてもおいしいです。冷凍にしておくと発酵しないので、そのまま長く置く事ができます。子供が成長した今でも毎年作り冬でも飲んでいます。(Sasaki)




□ 読者から:もう一つの梅の日

 いつも楽しく拝見させていただいております。「6月6日は梅の日」というポスターを見かけました。とりあえず情報としておつなぎさせていただきました。これからも楽しい情報・ためになる情報を楽しみにしております。(Y)

【編集部より】
 情報ありがとうございました。昨年、田辺市やみなべ町など、紀南地方の6市町やJA、梅干協同組合などでつくる「紀州梅の会」が6月6日を梅の日と定めています。

 果物に関するイベント情報など、皆様からの投稿をお待ちしています。




□ 文学の中の果物:落合町山川記(林芙美子)

 尾崎さんが鳥取へ帰って行ってから間もなく、私は吉屋さんの家に近い下落合に越した。落合はやっぱり離れがたいのか、前の家からは川一ツへだてた近さであった。誰かが植民地の領事館みたいだと云ったが、外から見ると、丘の上にあって随分背が高く見えた。庭が広くて庭の真中には水蜜桃(すいみつとう)のなる桃の木の大きいのが一本あった。井伏鱒二(いぶせますじ)さんは、何もほめないでこの桃の木だけをほめて行った。三輪にいる頃も、草花を植える趣味をひどく軽蔑して、何でも木を植えなさいと云っていたが、案のじょう、下落合の家に来ても、桃は春のうちに枝をおろしてやれとか、なかなかコウシャクがむずかしかった。

☆ ☆

林芙美子
(はやし ふみこ:明治36(1903)年12月31日-昭和26(1951)年6月28日)山口県下関市(門司市)生まれ。大正11年(1922)に上京して以来、多くの苦労をしてきた芙美子は、昭和5年(1930)に落合の地に移り住みました。代表作は「放浪記」、「浮雲」など。

「花のいのちはみじかくて苦しきことのみ多かりき」

林芙美子記念館のサイトは下記です。
http://www.regasu-shinjuku.or.jp/shinjuku-rekihaku/
public_html/fumiko.html





□ 「食を考える国民フォーラム」の開催について

 食育月間に合わせて、「未来ある子どもたちのために、家庭での楽しい食卓作りを!」をテーマに、「食を考える国民フォーラム」が、開催されます。

 味覚の授業を実践されている三國シェフの基調講演のほか、家庭での楽しい食卓作りのために、まず家庭で何ができるか、そして、地域や学校で、どのようなサポートができるかといったことについてのパネルディスカッションが行われます。

日時:平成19年6月14日(木)
   13:00〜16:00(開場12:00)
場所:「イイノホール」東京都千代田区内幸町2-1-1
参加費:無料(定員600名)
主催:食育シンポジウム協議会・食を考える国民会議
参加申し込み及び問い合わせ先:
「食育シンポジウム協議会・食を考える国民会議」事務局
 (財)食生活情報サービスセンター
 Tel03-3665-0291 Fax03-3665-0294




□ 今日のフォト

 クリの花が満開です(左図)。赤丸で囲ったところに雌花があります。ここの中にだいたい3個くらいクリの実が入り、成熟すると木から落ちて来ます。右の図は、クリの新しい品種を育成するために、雌花が咲く前に袋で覆い、咲いたら目的の雄花を入れて交配します。この場合は、果実が木から落ちてしまうと困るので収穫期が近づくと袋や網を掛けます。 (2007/6/8 掲載は次号まで)

http://www.kudamononet.com/kkr/snapshot/KK-News5.html



   「毎日くだもの200グラム運動」のロゴマークを使おう!
   http://www.kudamono200.or.jp/undou/copyright.html


☆ 編集部より ☆

 「5 A DAY」運動の評価報告は示唆に富んでいます。研究資金も援助していますが、その中に「地域社会の中で持続的、長期的に果物と野菜の摂取を促進するための研究」、「人が食習慣を変える条件に関するヒト介入研究」などが含まれています。(tnk)


 去年作った梅酒も残り少なくなってきたので週末に梅を買って梅酒を作ろうと思います。まだ、梅酒を作ったことのない方は作ってみてはどうでしょうか?(sk)


 秋や冬に比べて出回っている国産果物が少ないこの時期ですが、最近私はりんご煮にはまってます。旬ではないりんごでも美味しくいただけるということでこの前ある方に教えてもらったのですが、りんごをうすく切って水も砂糖も加えずに蓋をした鍋で弱火で煮るだけというお手軽スイーツです。ダイエット中の私でも安心。先週はちょっと奮発(?)して赤ワインとプルーンとレモン汁をプラスしてみたらかなり高級感がアップして幸せ倍増でした!!(0A)




 果物&健康NEWS ご愛読に感謝申し上げます。

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 ご協力に感謝いたします。  編集長 敬白

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