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第191回 果物でメタボ予防−その1

  


■□ 果物&健康NEWS Vol.191
 ■  2008年4月4日(金)


みなさん、こんにちは。お元気ですか。
特集は「第191回 果物でメタボ予防−その1」です。
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 ◇ くだもの健康豆知識:リンゴ「ふじ」の誕生秘話
 ◇ 今週のレシピ:リンゴ
 ◇ 果物でメタボ予防−その1
 ◇ 品種紹介:リンゴ「きたかみ」
 ◇ 果物の小話:リンゴの雑学−その1
 ◇ 文献紹介:リンゴ成分に直腸結腸ガン予防効果
 ◇ 文献紹介:リュウマチ様関節炎患者の心疾患予防のための食事
 ◇ 文学の中の果物:岡の家(鈴木三重吉)
 ◇ 今週の果物
 ◇ ビワの旬はいつ頃
 ◇ 今日のフォト
 ◆ 新入生、新社会人へ「果物&健康NEWS」をお勧めください
 ◇ 編集部より



□ くだもの健康豆知識:リンゴ「ふじ」の誕生秘話

 昭和13年3月5日に青森県藤崎町に園芸試験場東北支場が設立されました。昭和14年に「国光」と「デリシャス」を交配し、翌年圃場に播種された中から、のちの「ふじ」が生まれました。しかし、太平洋戦争(昭和16-20年)のため、ほとんどの研究員が応召され研究が大幅に抑制されました。

 研究員が復員後、再度育種が本格化した昭和26年に初めて結実し、その果実を食べた当時の定盛昌助氏が、「ふじ」の育種系統番号である「ロの628番」について育種台帳に「有望・要検討」と記載しており、早い時期からその品質は注目されていました。当時、試験場にはまだ冷蔵庫はなく、横に開く土蔵作りの蔵に収穫したリンゴを貯蔵していました。貯蔵性はこの蔵で保存して調査したそうです。




□ 今週のレシピ:リンゴ

○ シナモンアップルの豆腐プリン

材料
 リンゴ 中サイズ1個、メープルシロップ 大さじ4杯、シナモンパウダー 少々、充填豆腐 600g

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://cookpad.com/mykitchen/recipe/538917/

○ キャロット&アップル、カマンベールサラダ

材料(2人分)
  リンゴ(5ミリにスライス) 小1個、カマンベール 1/4個くらい、ニンジン(千切り) 中1本、レーズン 一握り、ひまわりの種、くるみなどナッツ類 一握り、オリーブオイル 大さじ1と1/2杯など

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://cookpad.com/mykitchen/recipe/539908/




□ 果物でメタボ予防−その1

 メタボリックシンドロームの健診が4月1日から始まりました。メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積と、高血糖、脂質代謝異常、高血圧のうち2つ以上が重なって集積している状態をいいます。それぞれの危険因子の程度が軽くても、重複していると相乗効果で心臓病など重篤な生活習慣病発症のリスクが高まります。

 診断基準は、ウエスト周囲径が男性で85cm以上、女性で90cm以上が必須条件です。これに加えて脂質代謝異常、高血圧、高血糖の3項目のうち2項目以上を満たす場合に、メタボリックシンドロームと診断されます(表)。


表 メタボリックシンドロームの診断基準
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ウエストサイズ
 男性85cm以上、女性90cm以上
脂質代謝異常
 高トリグリセライド血漿 150mg/dl以上 または/かつ
 低HDL-コレステロール血症 40mg/dl以下
高血圧
 収縮期血圧(最高血圧) 130mmHg以上  または/かつ
 拡張期血圧(最低血圧) 85mmHg以上
高血糖
 空腹時高血糖 110mg/dl以上
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注)ウエストサイズのはかり方
真っ直ぐに立って、軽く息を吐いた状態でへその周りを計測します。


果物と肥満

 「果物は甘くカロリーが高いので太るから食べない」と思っている方がおられます。しかし、ゴボウとリンゴを比較してみると、ゴボウのカロリーは100g当たり65kcalですが、リンゴのカロリーは54kcalです。パセリは44kcalでウンシュウミカンとほぼ同じカロリーです。このように、果物と野菜のカロリーは、ほぼ同じです。

 ダイエットには、ボリュームが大きく、水分や食物繊維を多く含む果物が優れています。例えば、リンゴの食物繊維は、水を吸収すると体積が12〜38倍にも大きくなります。食品のボリュームが大きいと満腹感が得られるため、結果として摂取する食事の量が減り、体重を減らす効果があります。そのため、アメリカを代表する医療機関であるメイヨ・クリニックでは健康的にダイエットするために果物の摂取制限はなく、少なくとも毎日3サービング以上摂取することを推奨しています(文献1)。

果物と高血圧

 高血圧と食事内容に関するアメリカ国立心肺血液研究所(NHLBI)などによってサポートされた研究から、飽和脂肪、コレステロール、総脂肪が低く、果物、野菜、低脂肪乳製品をたくさん食べている人の血圧が低いことが見いだされ、高血圧予防のためのDASH摂取プランが作成されました(文献2)。DASH摂取プランは、血圧の高い人たちに対して有効なだけでなく、現在は血圧が高くない人たちに対しても有益であるとして推奨されています。DASH摂取プランにおける果物の摂取量は、1日当たり320kcal〜400kcalです。この量はウンシュウミカンなら毎日7〜8個となります。

果物と脂質代謝異常

 果物に含まれている糖類、とくに果糖は、高脂血症の原因となるので、果物は体によくないと記述されることがあります。しかし、1986年、FDA(アメリカ食品医薬品局)は、甘くて栄養になる糖類(果糖、ショ糖、ブドウ糖など)に関する1,000以上の文献を検討し、健康面における評価を行い、高脂血症など生活習慣病に糖が直接的な原因であるという明確な証拠はないと結論づけました(文献3)。また、1997年FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の両機関の合同委員会は、糖類と生活習慣病との関係を再検討し、FDA報告の結論を支持しました。

 日本人に対して農研機構果樹研究所の田中らは、リンゴ摂取とトリグリセライドの増減との関係を調査しました。ボランティアに、リンゴを1日当たり1個半から2個(平均420g)を3週間摂取してもらったところ、リンゴを摂取する前と比べてトリグリセライドが統計的に有意に21%減少しました(文献4)。

 以上のように、メタボリックシンドロームのどの検査項目(果物と血糖値は次回)に対しても、果物の摂取は有効です。そのためメタボの予防や対策に果物の摂取が推奨されれています。

【文献】
1) Mayo Clinic Healthy Weight Pyramid
http://www.mayoclinic.com/popupnowrap.cfm?
objectid=16BA8370-E7FF-0DBD-
1D0D024E452DC8ED&method=display_full


2) DASH摂取プランガイドブック(PDFファイル:英文64ページ)。
http://www.nhlbi.nih.gov/health/public/
heart/hbp/dash/new_dash.pdf


3) Glinsmann, W.H. et al.: Evaluation of health aspects of sugars contained in carbohydrate sweeteners. Report of Sugars Task Force, 1986. J. Nutr. 116: S1-S216. (1986)

4) 間苧谷徹・田中敬一.くだもののはたらき-改訂版-.日園連.(2005)




□ 品種紹介:リンゴ「きたかみ」

 「きたかみ」は「東北2号(とうほく2ごう)」と「レッドゴールド」を交配して出来た品種です。成熟期は盛岡で9月上旬です。果実の大きさは150〜200gで小さいのですが、糖度12%、リンゴ酸0.5%前後で甘酸適和です。切り口の褐変が少ないのも特徴です。品種名は、育成地盛岡を流れる北上川にちなみ、また、北海道向けの意も込められています。

「きたかみ」の果実の写真は下記のサイトで見られます。
http://www.fruit.affrc.go.jp/
kajunoheya/ikuseihinsyu/data/hinsyu/cu-kitakami.html





□ 果物の小話:リンゴの雑学−その1

 現在の栽培品種のもととなる基本種の原生地は、小アジア・カフカス地方といわれています。この基本種に、ヨーロッパ中部から西部に原生していたリンゴの仲間とアジア西部のアストラハン地方からシベリア西南部に原生していたリンゴの仲間の血が入り、現在の栽培品種が形成されたとされています。

 リンゴ栽培の歴史は古く、いつ頃からか明らかではありませんが、BC2,000年頃の湖棲民族時代には栽培されていたと想像されています。スイスなどの湖棲(杭上)住居の遺跡から出土した炭化リンゴから推定すると、当時のリンゴには大果種と小果種とがあり、大果種のものでも果径30mm前後で、現在のクラブリンゴ(渋く,酸味の強い野生リンゴの総称)程度のものであったとされています。

 ギリシア時代には、野生種と栽培種の区別、接ぎ木繁殖法もあったとされています。ローマ人はリンゴを好み、ローマ時代には品種の概念がさらに明確となり、品種も30前後があったようです。

 リンゴがヨーロッパの中・北部に入ったのは、ローマ人の侵入に伴ってのようです。品種及び栽培技術の改良は、6〜7世紀になってヨーロッパ中部以北でアングロサクソン民族によって行われました。品種改良の方法は、自然にあるリンゴの樹から良いものを探すという方法で、当時のリンゴは改良されたとはいえ、果実は小さく、苦味と渋味がありました。

 大果のリンゴは、16世紀以降にイギリスにおいて同様な方法で選抜されたもので、今日のような交雑による品種改良は、18世紀末頃にイギリスにおいて初めて行われました。  (間苧谷)




□ 文献紹介:リンゴ成分に直腸結腸ガン予防効果

 リンゴやリンゴジュースを摂取すると直腸結腸ガンが予防できるとドイツの研究チームが発表しました。

 ヒトの糞便にリンゴペクチンやリンゴに含まれるポリフェノールを添加したところ、酪酸が生成されることが分かりました。酪酸はガンの発生を抑制する短鎖脂肪酸であり、かつ直腸結腸の粘膜を保護する働きをもつ栄養成分です。

 以上の結果からリンゴやリンゴジュースを摂取すると腸内で抗ガン作用をもつ酪酸が増加し、ガンを予防出来ると考察しています。

【文献】
Waldecker, M. et al.: Histone-deacetylase inhibition and butyrate formation: Fecal slurry incubations with apple pectin and apple juice extracts. Nutr., 24: 366-374/ '2008) [doi: 10.1016/j.nut.2007.12.013]




□ 文献紹介:リュウマチ様関節炎患者の心疾患予防のための食事

 リウマチ様関節炎患者は、心臓病や脳卒中の発症リスクが高いが、動物性食品とグルテンを含まない食品の摂取でリスクを下げることが出来るとスエーデンの研究チームが発表しました。

 研究では、リウマチ様関節炎患者に動物性食品とグルテンを含む穀類(小麦、大麦など)を除き、果物や野菜、ナッツ、あわ、ゴマなどの食事を摂取してもらったところ、総コレステロールとLDL-コレステロールが有意に低下しました。

 以上の結果から、研究者らはリュウマチ様関節炎患者に多い死因である心臓発作と脳卒中を防ぐためには動物性食品などを除く食事がよいと述べています。同時に、動物性食品を除いた場合の微量栄養素不足の危険性も考えられるのでこの研究結果の扱いには十分な注意が必要であると述べています。

【文献】
Naranjo, A. et al.: Cardiovascular disease in patients with rheumatoid arthritis: results from the QUEST-RA study. Arthri. Res. Ther., 10: R30. (2008) [doi: 10.1186/ar2383]




□ 文学の中の果物:岡の家(鈴木三重吉)

 その小さな女の子も、じぶんとおなじように、はだしのままで、黒っ茶けた木綿(もめん)の上着(うわぎ)を着ていました。しかし、その髪の毛は、ちょうど、男の子がいつも見ている光った窓のように、きれいな金色をしていました。それから目は、ま昼の空のようにまっ青にすんでいました。

 女の子は、にこにこしながら、男の子をさそって、お家の牛を見せてくれました。それは、ひたいに白い星のある、黒い小牛でした男の子はじぶんのお家の、四(よ)つ足の白い、栗の皮のような赤い色の牛のことを話しました。女の子は、そこいらになっているりんごを一つもいで、二人で食べました。二人はすっかりなかよしになりました。

 男の子は、金の窓のことを女の子に話しました。女の子は、「ええ、私もまいにち見ていますわ。でも、それは、あっちの方にあるんですよ。あなたはあべこべの方へ来たんですわ。」といいました。
「いらっしゃい。こっちへ来ると見えるのよ。」と、女の子はお家のそばの、すこしたかいところへ男の子をつれていきました。そして、金の窓は見えるときがきまっているのだといいました。男の子は、ああきまっている、お日さまがはいるときに見えるのだと答えました。



鈴木 三重吉(すずき みえきち)
 1882年9月29日-1936年6月27日。広島県生まれ。東京帝国大学在籍中、夏目漱石に送った「千鳥」が、夏目の推薦を得て「ホトトギス」に掲載される。「小鳥の巣」「桑の実」などを発表、小説家としての評価を高める。その後、童話への関心を抱き1916(大正5)年、童話集「湖水の女」を出版した。1918(大正7)年には児童文芸誌「赤い鳥」を創刊。




□ 今週の果物

 リンゴ(「ふじ」、「王林」など)はコンスタントに堅調です。カンキツ類は、みかん、ハッサク、ヒュウガナツ、イヨカン、デコポン、「はるみ」、「せとか」、ブンタン(「土佐文旦」など)が好調です。消費者から「せとか」やブンタンが美味しいとの声が寄せられています。

 イチゴは(「あまおう」、「女峰」、「さがほのか」、「さちのか」など)品種が楽しめて人気です。気温の上昇とともにスイカの人気がではじめました。また、ビワの入荷が始まりました。サラダやお弁当向けの果物も好評です。

生鮮食料品のマーケット・レポート(3月31日発行)は下記です。
http://www.maff.go.jp/toukei/sokuhou/
data/market2008-03-3/market2008-03-3.htm





□ ビワの旬はいつ頃

 店頭でビワが見られるようになりました。これから徐々に出荷量が増加していきます。ピークは5月中旬から6月中旬で、最後は7月上旬頃です。産地は長崎県、鹿児島県、千葉県、愛媛県、香川県などです。




□ 今日のフォト

 暖かい日が続くと次々と花が開くので、研究者は新しい品種育成をめざす交配に追われる毎日が続きます。前回、2段階方式の交雑法を紹介しましたが、今回は1段階方式を紹介します。

 花が開く前のつぼみから葯を採取し、20℃〜25℃で開葯し花粉を準備します。次に、交雑目的の花が開花する前のつぼみ(バルーンステージ)から雌しべだけを残し、その雌しべに花粉を交配し、小さな袋をかけます。

 花が咲いてしまうと他の花粉が交雑してしまう可能性があり、交配親が分からなくなるので、育種のための交配はしません。

 青い空と緑の大地に似合うモモの花が真っ盛りです。モモの交雑実験は終盤です。写真はモモの育種圃場です。

http://www.kudamononet.com/kkr/snapshot/KK-News38.html
  (掲載は次号まで)





■ 新入生、新社会人へ「果物&健康NEWS」をお勧めください

 新年度がスタートしました。ぜひ新入生や新社会人に「果物&健康NEWS」をお勧めください。登録サイトは下記です。
http://www.kudamononet.com/kkr/registory.html

 登録依頼パンフレット(PDFファイル)は下記にあります。
 http://www.kudamononet.com/kkr/index.html




☆ 編集部より ☆

 メタボリック・シンドロームの検診がスタートしました。このことにあわせて各メディアが一斉に報道していますが、残念ながら果物に対する誤解を載せている記事も多く見受けられます。できましたら「果物&健康NEWS」を取材してから記事にしてください。いつでも取材に応じます。(TNK)
連絡先:kudamono_kenkou@nm.maff.go.jp

 先日のどが痛くてもがいていたとき、母がカリンのはちみつ漬けを出してくれました。カリンを使ったのど飴はよく耳にしていましたが、はちみつ漬けは初めて。梨のしゃりしゃり感をより強くした感じでした。生果ってみたことないなぁと思い調べてみたら、渋みがあり硬いため、食べられないとのことでした。(KT)




 果物&健康NEWS ご愛読に感謝申し上げます。

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 ご協力に感謝いたします。  編集長 敬白

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