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第199回 食物繊維と肥満予防

  




■□ 果物&健康N8WS Vol.199
□■  2008年5月30日(金)


みなさん、こんにちは。お元気ですか。
特集は「食物繊維と肥満予防」です。
新鮮、おいしい、メルマガをゆっくりとお楽しみください。
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 ◇ くだもの健康豆知識:アンズ
 ◇ 今週のレシピ:アンズ
 ◇ 食物繊維と肥満予防
 ◇ 品種紹介:アンズ「平和」
 ◇ 文献紹介:生活習慣改善で糖尿病予防
 ◇ 読者から:日本語の文献検索サイトの紹介:
 ◇ 読者から:屈折糖度計の示度の誤差+ムッキーちゃん
 ◇ 文学の中の果物:馬上三日の記−エルサレムよりナザレへ(徳冨蘆花)
 ◇ 今週の果物
 ◇ 今日のフォト
 ◇ 編集部より




□ くだもの健康豆知識:アンズ

 アンズの原生地は、かっては栽培の歴史が古いアジア西部のアルメニアやアナトリア地方とされていましたが、現在では、中央アジアから中国を中心とするアジア東部と考えられています。

 中国からヨーロッパへの伝搬は、紀元前2〜1世紀頃の前漢時代にアンズがペルシャに入り、アルメニアを経由して1世紀の中頃にギリシャやローマに到達したしました。また、中国から我が国への導入は10世紀頃と考えられています。

 中国では昔からアンズ果実を生食や加工利用だけでなく、薬用にも使われていました。アンズの仁には苦味を呈するものと甘味を呈するものとがあります。前者は苦仁といい薬用に、後者は甘仁と呼ばれ食用に利用されています。




□ 今週のレシピ:アンズ

○ あんず&くるみロールパン

材料 (5個分)
 アンズ 5粒、くるみ 5〜10粒、強力粉 100g、薄力粉 100g、ドライイースト 1.0gほか

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://cookpad.com/mykitchen/recipe/538067/

○ アンズのコンフィ&シロップ

材料(750ml瓶1個分+290ml瓶1個分)
 アンズ 1.3kg(2パック)、グラニュー糖 1.17kg(杏の90%)、レモン果汁 大さじ3杯

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://cookpad.com/mykitchen/recipe/401399/




□ 食物繊維と肥満

 肥満は、食品から摂取したタンパク質、炭水化物、脂質、アルコールなどから得られるカロリーが、消費したカロリーを上回ると、上回った分が脂肪として蓄積することでおこります。内臓の周りに脂肪が蓄積した場合を内臓脂肪型肥満と呼び、これに加えて高血糖、
高血圧、脂質異常のうちいずれか2つ以上が生じている状態がメタボリックシンドロームです。

 摂取するボリュームを変えず、食事の内容をカロリーの高い脂肪を減らし、カロリーの低い食品を増やすダイエット法は、減量速度は遅いのですが、無理なく減量を長期間続けられることから注目されています。このダイエット法の特徴であるカロリーの低い食品とは、食物繊維を豊富に含む果物や野菜などのことです。

 食品に含まれている食物繊維の摂取量と肥満との関係を調べた6つの追跡調査(コホート研究:4研究は成人が対象、2研級は子供達が対象)のうち5つの追跡調査で、食物繊維を多く摂取している人は、食物繊維の摂取量の少ない人に比べて、統計的に有意に肥満のリスクが低いことが分かりました(文献1-5)。

 食物繊維は、小腸では分解されず大腸で微生物により分解を受けます。こうした特徴から食物繊維は、胃が空になるのを遅らせ、消化時間を増加させるとともに、胃を膨張させ満腹感を満たします。

 このように食物繊維は、同時に摂取した食品の胃などの消化器官での滞留時間を増やすことで、食品のグリセミック・インデックス値を下げる働きやインスリンの分泌を抑制する効果があります。こうした食物繊維のメカニズムから、食物繊維を多く含む果物などの食品を摂取すると肥満を予防し、メタボリックシンドロームの回避に有効です。

【文献】
1. Ludwig, D.S. et al.: Dietary fiber, weight gain, and cardiovascular disease risk factors in young adults. JAMA. 282: 1539-1546. (1999)

2. Liu, S. et al.: Relation between changes in intakes of dietary fiber and grain products and changes in weight and development of obesity among middle-aged women. Am. J. Clin. Nutr., 78: 920-927. (2003)

3. Ishihara, T. et/ al: Relationship between infant lifestyle and adolescent obesity. The Enzan maternal-and-child health longitudinal study. Nippon Koshu Eisei Zasshi, 50: 106-117. (2003)

4. Koh-Banerjee, P. et al.: Changes in whole-grain, bran, and cereal fiber consumption in relation to 8-y weight gain am0ong men. Am. J. Clin. Nutr., 80: 1237-1245. (2004)

5. Nooyens, A.C.J. et al.: Effects of retirement on lifestyle in relation to changes in weight and waist circumference in Dutch men: a prospective study. Public Health Nutr., 8: 1266-1274. (2005)




□ 品種紹介:アンズ「平和」

 アンズ「平和」は長野県の旧更埴市の南沢小重太郎氏が大正4〜5年頃に発見した偶発実生ですが、現在でも沢山栽培されています。名前の由来は第一次世界大戦の終結を記念してつけられたと伝えられています。

 果実は円形で、重量は70gくらいとアンズの中では中から大です。甘みは少なく酸味が多いので生食されることはあまりありません。多くはシラップ漬けや干しアンズとして利用されています。




□ 文献紹介:生活習慣改善で糖尿病予防

 糖尿病の罹患リスクの高い人を対象に、食事と運動を用いた糖尿病予防プログラムを6年間行い、プログラム終了後も14年間追跡調査した結果、介入群で糖尿病の進行が抑制されたと、中国を中心とした国際研究チームが発表しました。

 介入プログラムでは、アルコールや食事量を減らすなど食生活の改善と運動を増やすことを奨励しました。その結果、1986〜1992年の6年間で介入群では糖尿病発症のリスクを51%下げることに成功したばかりでなく、研究開始から20年後の2006年の再調査でも、前回と同様に介入群で糖尿病の発症リスクが43%下がっていました。

【文献】
Guangwei, Li. et a;.: The long-term effect of lifestyle interventions to prevent diabetes in the China Da Qing Diabetes Prevention Study: a 20-year follow-up study. Lancet, 371: 1783-1789. (2008) [DOI: 10.1016/S0140-6736(08)60766-7]





□ 読者から:日本語の文献検索サイトの紹介

 いつもお世話になっております。
 農林水産研究情報総合センターの渡部と申します。

 Vol.196を拝見させていただいたのですが、その中に読者から:日本語で文献検索という投稿がありました。

 それを読みまして何か機会がありましたら、当センターで作成・公開しております「JASI(日本農学文献記事索引)
http://www.affrc.go.jp/db_search/jasi 
をご紹介頂ければと思いメールさせて頂きました。

 JASIは日本国内で発行される農林水産関係の学術雑誌約500誌に掲載された論文等の書誌情報を収録しており、許諾を得た論文については抄録及び全文も公開しております。

 日本語の文献を収録しておりますので、日本語で検索出来ます。PubMedに比べればデータ数は少ないですが、約27万件(1970年〜)のデータを収録しております。

 JASIの他にもいろいろなデータベースをAGROPEDIA(農学情報検
索サイト)で公開しております。
http://www.affrc.go.jp/Agropedia/

 突然のメールで申し訳ありませんが、ご紹介頂ければ幸いです。今後ともよろしくお願い致します。 (農研情報セ:渡部)

【編集部より】
 貴重な情報ありがとうございました。JASIで文献検索するときのコツなどがありましたら教えてください。
 読者の皆様がお持ちの情報をぜひ果物&健康NEWSまでお知らせください。




□ 読者から:屈折糖度計の示度の誤差+ムッキーちゃん

 毎号勉強させて頂き感謝しております。
 今号の屈折糖度計の解説記事中に10%ショ糖液の濃度と10%ブドウ糖液の屈折率が同じ1.3477になっていますが、屈折糖度計の示度では10と9.95で違いますが、なぜでしょうか?

 先号での甘夏などの皮の厚い皮むきに便利と教えてくれた読者の投稿がありました。早速注文して使いましたら、抜群でした。温州などの皮の薄いのには向きませんが(使い方を工夫して指を間にはさんで皮に食い込む厚さを加減すれば使えるかも。)、大変いい情報有難うございました。 (砂町隆)

【編集部より】
 メールありがとうございました。屈折率を小数点以下4桁で表すと10%ショ糖液も10%ブドウ糖液も同じ1.3477となりますですが、この下の桁が両者で異なります。




□ 文学の中の果物:馬上三日の記−エルサレムよりナザレへ(徳冨蘆花)

車上

 六月四日、エルサレムを立ち、サマリヤを経てガリラヤに赴かんとす。十字架よりナザレの大工場(だいくば)へ、即ち四福音(しふくいん)を逆に読むなり。

 エル・ビレエにてエルサレムに最後の告別をなし、馬車はいよ/\北へ走る。車中には案内者一名載せたり。名はフィリップ・ジヤルルック三十八九、シリヤ人にしてクリスチアンなり。此馬車道は、八年以前独逸皇帝が土耳其(とるこ)領内遊歴の折修繕したるものとか。独帝の漫遊以来パレスタインに於ける独逸人の活動著しく、到る処のホテルの如きも独逸人の経営に係るもの多し。

 アブラハムが天幕を張りしベテルの跡なるべしと云ふ所をはじめとして、道の左右は遠き山の側(きは)、近き谷の隈(くま)、到る処に旧約の古蹟と十字軍時代の建物の名残あり。岩の山、畑なくして唯処々に橄欖林(かんらんりん)或は稀に葡萄畑を見る。馬車とまりし或小屋にては、白き桑実を売れり。白、紫両種あり、皆果実の為に植うるなり。ダマスコ附近には養蚕用の桑畑ありと云ふ。やがて強盗谷、強盗泉あり。岩壁の下、草地(くさぢ)数弓(すきう)、荷を卸して駱駝臥し、人憩ふ。我儕(われら)の馬も水のみて行く。やがてまた十数頭の駱駝鈴(りん)を鳴らし驢馬の人これを駆り来るを見る。荷は皆杏(あんず)。



サマリヤの墟址

 五日。日と共に馬に上る。上りて見れば、昨夜此痛さにてはと思ひし程にはあらず。サマリヤは概してユダヤよりも地味まされり。殊にナブルスの谷は、清泉処々に湧きて、橄欖(かんらん)、無花果(いちじゆく)、杏(あんず)、桑、林檎、葡萄、各種野菜など青々と茂り、小川の末には蛙の音さへ聞こえぬ。

 ナブルスを出はなれて程なく新道より北に折れ、山路を行くこと二時間、セバスチエーに到る。即ち昔のイスラエル王国の首都サマリヤにて、後ヘロデも此処に壮麗なる府を建てぬ。四方山の中に立ちたる高さ三百尺の一孤邱(いつこきう)、段々畠の上に些(ちと)の橄欖の樹あり、土小屋五六其額(ひたひ)に巣くふ。馬上ながらに邱上(きうじやう)を一巡す。昔の名残には、ヘロデの建てし街の面影を見るべき花崗岩(みかげいし)の柱十数本、一丈五尺にして往々一石より成るもの、また山背(さんはい)の窪地に劇場の墟址あり。麦圃の畔、橄欖の影に、断柱(だんちう)残礎(ざんそ)散在す。

 村の附近に古寺の墟あり、地下室にバプテスマのヨハネの墓、エリシヤの墓、オバデヤの墓など称するものあり。村人古銭など持ち来りてすゝむ。山上より西に地中海の寸碧(すんぺき)を見る。



徳冨 蘆花(とくとみ ろか)
 1868(明治元)年12月8日-1927(昭和2)年9月18日。本名は健次郎。熊本県水俣出身。代表作は「不如帰」。日清戦争を契機に、平民主義的な立場から国家主義の実兄蘇峰と対立。パレスチナへの巡礼とトルストイ訪問などを経て半農生活を送る。
 世田谷の邸宅は寄贈され、蘆花恒春園(面積約7万平方メートル)として開放されている。




□ 今週の果物

 仙台市では、地元産のイチゴ、熊本や静岡産の甘夏ミカンなどのカンキツ、青森産のリンゴ(「ふじ」、「王林」、「ジョナゴールド」)、熊本や千葉産の「スイカ」や、熊本や高知産(温室メロン)、茨城産(「アンデス」)のメロンなどが人気を分けています。

 大阪や山梨産のブドウ(「デラウエア」、「巨峰」)、和歌山、山梨、高知産のウメも堅調で、サクランボ、ビワ、スモモ、モモなどの出荷が始まっています。 (仙台市青果物日別取扱高統計から)




□ 今日のフォト

 いよいよ果物のシーズンが到来します。農研機構果樹研究所では、収穫前の美味しい果実を鳥に食べられないように圃場に網掛けが行われました。季節の初めは核果類(サクランボ、ウメ、アンズ、スモモ、モモなど)からです。

http://www.kudamononet.com/kkr/snapshot/KK-News45.html
  (掲載は次号まで)





☆ 編集部より ☆

 社会応用科学は、従来のアカデミックな学問体系とはことなり、消費者や生産者などが直接利用できる学問体系で、例えば、「DASH摂取プラン」や「毎日くだもの200グラム」を科学的に裏付けてています。(tnk)

 更科のあんずの里は、幼い頃に父母や祖父母に連れられてよく行きました。懐かしいです。(KT)




 果物&健康NEWS ご愛読に感謝申し上げます。

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