くだもの・科学・健康ジャーナルHP > 果物&健康NEWSトップ >
  ほぼ週刊メールマガジン「果物&健康NEWS」

第210回 果物摂取と2型糖尿病予防の歴史−その2

  



■□ 果物&健康N8WS Vol.210
□■  2008年8月15日(金)


みなさん、こんにちは。お元気ですか。
特集は「果物摂取と2型糖尿病予防の歴史−その2」です。

携帯WEBメールで果物&健康NEWSが読めます。
────────────────────────
毎日くだもの200グラム以上食べましょう!
公式ホームページは http://www.kudamono200.or.jp

:::■ メニュー ■::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 ◇ くだもの健康豆知識:日本食品標準成分表
 ◇ 今週のレシピ:ナシ
 ◇ 果物摂取と2型糖尿病予防の歴史−その2
 ◇ 品種紹介:ナシ「新水」
 ◇ 文献紹介:ビタミンCで腫瘍の成長抑制
 ◇ 読者から:ビワの伝承情報、ありがとうございました
 ◇ 読者から:メルマガ記事の専門化についての意見
 ◇ 読者から:5 A DAY運動についての質問
 ◇ 読者から:リポフル閑談の表記について
 ◇ 文学の中の果物:夜叉ヶ池(泉鏡花)
 ◇ 夏休み特集:果物と理科自由研究
 ◇ 今週の果物
 ◇ 今日のフォト
 ◇ 編集部より



□ くだもの健康豆知識:日本食品標準成分表

 様々な食品成分表が市販されていますが、そのおおもとは文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会が作成した日本食品標準成分表です。最新版は平成17年(2005)に刊行された五訂増補版です。最初に作られたのは昭和25年(1950)です。

 日本食品標準成分表と市販の成分表のデータは同じですが、原本にはビタミンやミネラルなどの分析法や変更点などが記載されています。

 初版などと五訂増補版で成分値が異なっていますが、多くの場合、両者の違いは分析法の進歩によるものです。「昔の方がビタミンが多かった」という場合、分析法の進歩を見落としていることがあります。

五訂増補日本食品標準成分表(国立印刷局:A4判、2,300円)


=


□ 今週のレシピ:ナシ

○ 梨ジャム
○ 梨のヨーグルトかけ
○ 梨のワイン煮ホイップクリーム添え
○ 梨ジュース
○ 梨シェイク
○ 梨と生野菜のサラダ
○ 梨とポテトのサラダ
○ 梨とあおうりのサラダ


作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://members.jcom.home.ne.jp/
sinkawa.w/nasinoryouri.htm





□ 果物摂取と2型糖尿病予防の歴史−その2

○ 肥満と2型糖尿病

 「日本人の体格は、欧米人とは異なるので、肥満が2型糖尿病の原因とする欧米のデータをそのまま適用することはできない」と長く考えられていました。しかし、臨床研究が進み、2型糖尿病やその予備群など重篤な生活習慣病を予防するため、2005年に内科系8学会(日本糖尿病学会、日本肥満学会など)が合同委員会を編成し、メタボリックシンドロームの診断基準を作成しました。その診断基準では、内臓脂肪型肥満がメタボリックシンドローム判定の必須項目となりました。すなわち、2型糖尿病など生活習慣病の発症と予防には、日本人と欧米人との間に大きな違いがないことが分かりました。

○ 果物と血糖値

 2型糖尿病予防には血糖値のコントロールが重要です。2型糖尿病は、食生活など生活習慣の乱れによってインスリンがでにくくなったり、インスリンを受け取る細胞の感受性が鈍くなったりして、高血糖の状態が慢性化した疾病です。従って、血糖値の上昇はインスリンの働きに影響するため、インスリンが正常に作用する食生活が重要です。

 そのため、「血糖値を上げないためにブドウ糖など糖分の摂取を控え、デンプンなどの摂取が必要」と長い間考えられてきました。そして、「ブドウ糖などを含む果物の摂取を抑制すべき」との栄養指導が行われていました。

 しかし、最近の研究からデンプン食品よりも果物の方が血糖値を上げないことが分かり、栄養指導面で大きな転換が行われました。

 炭水化物を含む食品の血糖上昇作用を数値化した指数であるグリセミック・インデックスは、2型糖尿病予防に効果的な指標として使われています。グリセミック・インデックスとは、50gのブドウ糖を摂取した後、2時間の血糖上昇曲線の下の面積を基準(100)として、同量の糖質を含むそれ以外の食品を食べた後、2時間の血糖上昇の割合を、パーセントで表した数値です。

 この指標から、フランスパンや精白パンなどのデンプンを主体とした食品のグリセミック・インデックス値はそれぞれ95、70でした(文献1)。一方、果物は低く、リンゴ38、セイヨウナシ38、モモ42、オレンジ42、サクランボ22でした。果物のグリセミック・インデックス値が低い理由は、良質な食物繊維などを多く含むためです。

 以上のように、従来とは異なり、果物は血糖値を上げない食品として分類されています。 (つづく)

【文献】
1) Foster-Powell K. et al.: International table of glycemic index and glycemic load values: 2002. Am. J. Clin. Nutr., 76: 5-56. (2002)




□ 品種紹介:ナシ「新水」

 「新水(しんすい)」は「菊水(きくすい)」と「君塚早生(きみつかわせ)」を交配して育成された早生品種です。「幸水(こうすい)」の前に収穫される赤ナシです。果実重は250〜300g、糖度は13%前後と高く、酸味も「幸水」より強く、食味は濃厚です。黒斑病に弱いのですが無袋栽培でも被害は比較的少ないです。果実品質に優れています。また、「新水」への放射線照射により黒斑病抵抗性が付与された品種として「寿新水」が育成されました。

「新水」の果実の写真は下記のサイトで見られます。
http://fruit.naro.affrc.go.jp/kajunoheya/ikuseihinsyu/
data/hinsyu/cu-shinsui.html





□ 文献紹介:ビタミンCで腫瘍の成長抑制

 モデルマウスの実験から高濃度のビタミンCでガンなどの腫瘍の成長が抑制されたとアメリカ国立衛生研究所(NHI)の研究グループが発表しました。

 モデルマウスに高濃度のビタミンC(アスコルビン酸塩/アスコルビン酸)を注射し、血中濃度を高めると脳腫瘍、卵巣ガン、膵臓ガンの腫瘍の重量と増殖速度を約50%まで抑制されることが分かりました。

 研究者らは、この研究をヒトに当てはめると、1日200mg以上のビタミンC(オレンジ2個、またはブロッコリー1サービング)を摂取するとビタミンC濃度が高まり、ガンなどの腫瘍の成長を抑制出来る可能性があると述べています。

【文献】
Chen, O. et al.: Pharmacologic doses of ascorbate act as a prooxidant and decrease growth of aggressive tumor xenografts in mice. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. online Aug. 4, (2008)
[doi: 10.1073/pnas.0804226105]




□ 読者から:ビワの伝承情報、ありがとうございました

 全国の皆さん、情報をありがとうございました。
 自宅にびわの木があり、とても気になっていたので、これで安心できます。これからもためになる情報をよろしくお願いします。
  (by よくばりみかん)

【編集部より】
 編集部からも皆様にお礼申し上げます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。




□ 読者から:メルマガ記事の専門化についての意見

前略
 いつも読ませて頂いております。
 G市場で夏休み子供教室を3回開催しました。
 ところで、最近内容が高等というかハ−ドルが高いというか。専門分野の域になっているような気がして遠くに感じるのは、私だけならいいのですが…… (MM)

【編集部より】
 貴重なご意見ありがとうございます。
 確かに、最近の特集は、医学、栄養学の専門誌レベルの内容でした。こうした話題も果物&健康NEWSの特徴ですが、それだけではいけないと感じていました。
 読んで楽しいメルマガを目指して、様々な話題を掲載していきます。これからもアドバイスをお願いします。




□ 読者から:5 A DAY運動についての質問

 いつも楽しくよましていただいております。
 前回(くだもの健康豆知識:ダイナミックに変化、果物研究と摂取量)の中の文章で以下の点が理解しがたいのです。

 「5 A DAY運動」、これは一日に5個のりんご、又はオレンジということですね。しかし今では 13サービング (A DAY)?.毎日13個は無理です。不可能です。

 私はりんごが大好きで 子供時代から毎日少ない時でもリンゴ1ケは食べ続けています。現在は一個を家内と二人で食べています。半個を食べ続けた場合どうなのでしょうか。私は不思議と殆ど風邪を引きません。お答えくだされば幸甚です。(H)

【編集部より】
 メールありがとうございました。
 どうやって毎日13サービングの果物と野菜を摂取するかについて、糖尿病の特集が終了したあと、一日の料理メニューなどを紹介します。
 また、生活習慣病に対する個人差を明かにする研究は、現代医科学の最先端のテーマです。オーダーメード治療・予防を目標に、個人によってほんの少し異なっている遺伝子変異と生活習慣病との関係について解析が進んでいます。こうした研究についても紹介していきます。




□ 読者から:リポフル閑談の表記について

 リポフル閑談の件、早速のご対応ありがとうございました。
 私は以前よりも読みやすくなって嬉しいですが、他の読者の方々はどうでしょう。。  ≪ありんこ≫

【編集部より】
 ご指摘ありがとうございました。これからも記事内容とともに、読みやすさの改善も進めていきます。




□ 文学の中の果物:夜叉ヶ池(泉鏡花)

場所 越前国大野郡鹿見村琴弾谷
時  現代。――盛夏
人名 萩原晃(鐘楼守)
   百合(娘)
   山沢学円(文学士)
   白雪姫(夜叉ヶ池の主)

三国岳(みくにだけ)の麓(ふもと)の里に、暮六(くれむ)つの
鐘きこゆ。――幕を開く。
萩原晃(はぎわらあきら)この時白髪(しらが)のつくり、鐘楼
(しょうろう)の上に立ちて夕陽(せきよう)を望みつつあり。鐘
楼は柱に蔦(つた)からまり、高き石段に苔(こけ)蒸し、棟には
草生ゆ。晃やがて徐(おもむろ)に段を下りて、清水に米を磨
(と)ぐお百合(ゆり)の背後に行(ゆ)く。

晃 ; 水は、美しい。いつ見ても……美しいな。
百合・ ええ。

##

時に蚊遣(かやり)の煙なびく、
学円。日に焼けたるパナマ帽子、背広の服、落着(おちつき)のある人体(じんてい)なり。風呂敷包を斜(はす)に背(しょ)い、脚絆草鞋穿(きゃはんわらじばき)、杖(ステッキ)づくりの洋傘(こうもり)をついて、鐘楼の下に出づ。打仰ぎ鐘を眺め、

学円: 今朝、明六(あけむ)つの橋を渡って、ここで暮六つの鐘を聞い 
   た。……

##

学円: この上、晩飯の御難題は言出しませんが、いかんとも腹が空いた。
百合・ ほほ。(と打笑(うちえ)み)筧(かけひ)の下に、梨(ありの
    み)が冷してござんす、上げましょう。(と夕顔の蔭に立廻る。)
学円: (がぶがぶと茶を呑み、衣兜(ポケット)から扇子を取って、煽
    いだのを、と翳(かざ)して見つつ)おお、咲きました。貴女の
    顔を見るように。
百合・ ええ?(聞返す。)
学円: いや、髪の色を見るように。
百合・ もう、年をとりますと、花どころではございません。早く干瓢(か 
   んぴょう)にでもなりますれば、……とそればかりを待っております。
学円: 小刀をこれへお遣わし……私が剥きます。――お世話を掛けては
    かえって気遣いな。どれどれ……旅の事欠け、不器用ながら、梨
    (なし)の皮ぐらいは、うまく剥きます。おおおお氷よりよく冷え
    た。玉を削るとはこの事じゃろう。

##

 山沢、花は人の目を誘う、水は人の心を引く。君も夜叉ヶ池を見に来たと云う。私がやっぱり、池を見ようと、この里へ来た時、暮六つの鐘が鳴ったんだ。



泉 鏡花(いずみ きょうか)
 1873年11月4日-1939年9月7日。本名、鏡太郎。石川県金沢市下新町生まれ。尾崎紅葉に師事し、「夜行巡査」、「外科室」で評価され、「高野聖」で人気作家になる。近代幻想文学の先駆者。代表作は「婦系図」、「歌行燈」、「夜叉ヶ池」など。



夜叉ヶ池(やしゃがいけ)
 夜叉ヶ池は、岐阜県と福井県の県境付近にある。昔々、弥平の娘は大蛇となり、雄蛇が焼死した故 夜叉ヶ池に移ったという。




□ 夏休み特集:果物と理科自由研究

○ リンゴの色はなぜ変わる
http://www.asagaku.com/rika_time/2005/11/1102.htm

○ イチゴを種から育ててみよう
http://www.asagaku.com/rika_time/2007/03/0328.htm

○ バナナで紫外線チェック
http://www.asagaku.com/rika_time/2008/06/0618.htm

○ ビタミンCを探し出そう!
http://www.asagaku.com/rika_time/2007/04/0425.htm





□ 今週の果物

 今週は仙台市の青果物市場へ入荷している果物について紹介します。地元宮城産ではリンゴ「つがる」が店頭に並び始めました。また、山形、福島、秋田産や北海道産の果物が多いのも特徴です。

リンゴは地元宮城や山形産「つがる」のほか、青森産の「王林」、「ふじ」です。ミカンは愛知 佐賀、宮崎産などです。

ニホンナシは茨城、山梨産の「幸水」など、モモは福島産、スモモは山梨産、ブドウ「デラウェアは山形産、「巨峰」は山梨産など、カキ(渋ガキ)は奈良産です。

イチゴは青森、山形産、メロン(温室メロンや「アンデスメロン」)は北海道、茨城、山形産、スイカは山形、秋田産です。




□ 今日のフォト

 モモを1年を通して食べるための工夫に缶詰加工があります。今回紹介するのは、モモの缶詰作り作業の写真です。一番上の写真は缶詰用品種「錦」です。次が、モモの皮の剥皮工程で、三番目がモモの種を除いているところです。最後がモモ加工製品です。

http://www.kudamononet.com/kkr/snapshot/KK-News54.html
  (掲載は次号まで)





☆ 編集部より ☆

 昔、夏には蚊取り線香が欠かせませんでした。蚊取り線香入れには豚の形のものや煉瓦造り風の家などいろいろありました。縁側(もしかして死語)でスイカの種飛ばしや線香花火などが暑い夏の定番でした。今日は祖先を思い、しのぶ日です。(tnk)

 オリンピック野球キューバ戦。一目おいていた試合でスポーツバーに出撃して、応援したのですが、残念な結果となってしまいました。ダルビッシュを始め、皆あまり調子がよくありませんでしたね。北京の暑い夏でばててしまったのでしょうか。選手村にもおいしい果実が置いてあるとよいのですが・・・。(KT)




 果物&健康NEWS ご愛読に感謝申し上げます。

 無断転載はお断りします。 リンクは自由です。

 詳しくは、著作権、リンクについて に記載しています。

 ご協力に感謝いたします。  編集長 敬白

Copyright 2004-2008 田中敬一. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.



メルマガ果物&健康NEWS登録




サイト案内




くだもの
はたらき



果物と糖尿病予防


果物&健康Newsへ戻る
果物&健康Newsへ戻る


くだもの・科学・健康ジャーナルへ
くだもの・科学・健康ジャーナル
ホームページへ戻る