ほぼ週刊メールマガジン「果物&健康NEWS」

第29回 クリの渋皮剥皮性 


  

      

□□■  果物&健康NEWS Vol.29 ■□□
  ■   2004年9月27日(月) ■


 みなさん、こんにちは!
 今回は、クリの渋皮剥皮性についてです。



■メニュ−■

  □□ クリの渋皮剥皮性 □□

  ○○「世界ハートの日」に向けて-WHOニュースリリースから ○○

  ○◇ 今週のレシピ−クリのクリームスープ ◇○

  ○○ 九州くだもの・やさいセミナーを開催 ○○



□□ クリの渋皮剥皮性 □□

 街角で、駅の構内で食べた甘栗(チュウゴクグリ)、パリの凱旋門やローマの遺跡近くの露店で買った焼グリ(ヨーロッパグリ)、しかしながら、ニホングリは渋皮剥皮が困難なため焼グリには向きません。世界的にみて経済上重要なクリの種類は、ヨーロッパグリ(Castanea sativa)、チュウゴクグリ(C. mollissima)、アメリカグリ(C. dentata)とニホングリ(C. crenata)です。これら4種類の間には様々な形質の違いがありますが、なかでも渋皮剥皮性はそれらを特徴づける形質です。渋皮剥皮は、チュウゴクグリがもっとも容易で、アメリカグリとヨーロッパグリが続き、ニホングリが最も困難です。

 なぜ、ニホングリの渋皮は剥皮しにくいのでしょうか。クリを乾燥させると剥けやすくなるなど、古来から言われている方法を試してみました。確かに、何もしないよりは剥けやすくなりますが、チュウゴクグリのようには剥けません。

 そこで、渋皮剥皮が簡単なチュウゴクグリと困難なニホングリの成熟過程における渋皮剥皮性の変化を調べてみました。その結果、生育初期にはニホングリとチュウゴクグリの渋皮剥皮性に差異は認められませんでした。ところが、ニホングリでは生育後期から渋皮は次第に剥けにくくなり、果実の落果とともに急激に剥皮が困難になりました。色々と調べたところ、渋皮の剥皮時間は渋皮中のポリフェノール含量と相関が高いことがわかりました。このことから、渋皮中のポリフェノールは、渋皮と果肉の接着に関与していると考えられました。

 このことを顕微鏡を用いて視覚的に確認することもできました。渋皮が剥がれにくくなり始める頃にタンニン細胞(ポリフェノールを含む細胞)があらわれ、剥皮が困難になるにしたがってタンニン細胞が増加しました。そして、剥皮が最も困難な時期には、渋皮と果肉との間にポリフェノールの蓄積が認められました。

 渋皮と果肉の接着にポリフェノールが関与しているとすれば、ポリフェノールだけをうまく分解してやれば、渋皮が剥皮できるのではないかと考えました。ポリフェノールの化学的特徴は、6個の炭素が環状構造(ベンゼン環)になっていることです。そこで、フェノールの環状構造を分解する亜塩素酸ナトリウムでクリの渋皮を処理したところ、果肉から渋皮が離れ、反応溶液中に溶解し、果肉の表面を傷つけることなく渋皮を剥皮することができました。

 以上の結果をまとめると、未熟なニホングリではチュウゴクグリと同様に剥皮が容易で、ポリフェノール含量も少ないが、収穫期に近づくとポリフェノールの生合成がさかんになり、渋皮の中に蓄積します。果実が落果すると、渋皮剥皮が急激に困難になるのは、落果により渋皮が急速に脱水されるために渋皮の細胞が崩壊し、細胞内に局在していたポリフェノールが細胞の外にでて、渋皮と果肉を接着するため、ニホングリの渋皮剥皮が困難になることがわかりました。現在、果樹研究所では、ニホングリでも渋皮剥皮が容易なクリの品種の育成を行っています。




○○ 「世界ハートの日」に向けて-WHOニュースリリースから ○○

 9月最後の日曜日は「世界ハートの日」(今年は9月26日)です。そこで、世界保健機関(WHO)は、心臓疾患の死亡者数や危険因子などをまとめた「心臓病と脳卒中の世界地図」を発表しました。心臓病と脳卒中による死者数は年間約1700万人で、全死因の1/3を占めていますが、今後さらに増加すると予測しています。また、心臓病と脳卒中のリスクは子供時代から始まること、禁煙や運動など生活習慣の改善による予防対策の重要性を指摘するとともに、知識の普及や法律の整備などを求めています。

 公表された世界地図によると、脳卒中による死亡者数が最も多いのは中国(約165万人)で、インド(約77万人)、ロシア(約51万人)、アメリカ(約16万人)と続き、日本は約13万人で第5位です。一方、冠状動脈疾患(心臓病)による死亡者数は、インド(約153万人)を筆頭に中国、ロシア、アメリカと続き、日本(約9万人)は15位です。

 また、危険要因として、高血圧、脂肪、たばこ、運動不足、肥満、糖尿病などについて、各国を比較しています。日本や中国、ロシアはたばこや高血圧によるリスクが、米国は肥満によるリスクが他に比べて高いと指摘しています。

WHOのサイトは下記です。
http://www.who.int/mediacentre/news/releases/2004/pr68/en/

http://www.who.int/cardiovascular_diseases/resources/atlas/en/

 世界ハート連合も「世界ハートの日」にむけて下記の文書を発表しています。この中で、子供たちを心臓病から守ることの大切さを訴えるとともに、心臓病予防のために果物と野菜の摂取を推奨するとともに、砂糖、塩の摂取を抑制するよう勧告しています。

http://www.worldheartday.org/news/DayPR2004_FN.pdf




○◇ 今週のレシピ ◇○

○クリのクリームスープ

(材料)
 バター 大さじ3杯、セロリ 1本、中位のニンジン 1本
 中位のタマネギ 1個、細かく刻んだパセリ 1/4カップ
 挽いたクローブ(丁字)小さじ1杯
 月桂樹の葉(あとで取り除く)1枚
 鶏のだし汁 6カップ、 渋皮を剥いたクリ 370g
 乳脂肪の多いクリーム 1/4カップ
 コショウ 小さじ1/4杯、味付け用の塩 少々

(作り方)
・セロリ、にんじん、たまねぎを小さく刻みフードプロセッサにかけて下さい。
・ソース用平鍋にバターを溶かしてください。
・セロリ、にんじん、たまねぎを加えてください。
・およそ10分間炒めて下さい。
・クリ、ブイヨン、パセリ、クローブ、月桂樹の葉を加えてください。
・30-45分間、蓋をしてぐつぐつ煮込みます。
・少しずつミキサーでスープを均一化し、別のなべに移します。
・クリーム、塩、コショウを入れかき回し、中くらいの熱で暖かくなるまで再加熱します。
・少しパセリを添えると良いでしょう。



○○ 九州くだもの・やさいセミナーを開催 ○○

 キレイの秘訣は野菜とくだもの〜毎日くだもの200g、ベジフルセブン〜

 最近の日本人の「食」を巡っては、健康・栄養についての正確な情報の不足、食生活の乱れによる栄養バランスの偏り、生活習慣病の増加等の様々な問題が生じています。特に、健康に欠かすことのできないビタミン、ミネラル等を豊富に含む野菜・果物の摂取量が大きく不足しており、その傾向は若い世代ほど顕著となっています。

 このため、専門家の話を聞くことにより、毎日の食生活に「野菜350g」、「果物200g」の摂取の考え方を定着させ、九州地域での摂取拡大を図るため、以下のとおり開催しますのでご案内します。多数のご参加をお待ちしております。

1 日 時:平成16年10月17日(日) 10:00〜18:00
2 場 所:エルガーラホール 7F 中ホール(セミナー及びトークショー)
      福岡天神・大丸前パサージュ広場(イベント)
      (福岡市中央区天神1−4−2)
3 内容:
【第1部:10:30開場】 
 セミナー:「野菜・果物の新しい機能と上手な摂り方」
        学校法人中村学園大学栄養科学部教授 矢野治江氏
【第2部:14:00開場】
 トークショー:「キレイの秘訣は野菜とくだもの」
          ベジタブル&フルーツマイスター 王 理恵氏
          食育担当シニアマネージャー  金田芙美氏
 当日は、上記の他に果物・野菜に関するクイズやミニセミナーのイベントも開催します。
 また、当日は、セミナー及びトークショー参加者でスタンプラリーに参加頂いた方全員に「野菜・果物」のプレゼントがあります。
4 参加申込:
 セミナー、トークショーに参加を希望される方は、所属、氏名、連絡先、第1部または第2部どちらに参加するか(両方に参加可能です)を明記して、下記まで申込み下さい。
 参加費は無料ですが、定員(第1部、第2部とも180名)になり次第締め切らせていただきます。
5 問い合せ・申込先
  九州農政局生産経営流通部園芸特産課(担当:財津・井上)
   〒860-8527 熊本市二の丸1−2
電話:096-353-3575
    FAX:096-324-1439
    E-Mail:kudamono-yasai@kyushu.maff.go.jp



☆ 編集部より☆

 味覚の秋がやってきました。今年はどの果物も味がよいのでうれしいです。(tnk)

 健康の維持増進に良い果物を、今日も食べましょう。(N)



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