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 ■ キッズQ:ブドウで地球の気温が測れるって本当?


      
 毎年、春になると気象庁がウメやサクラの開花・満開日、ウグイスの初鳴きなどを発表しています。植物や動物は、季節によって様々に変化します。この現象を生物季節現象といいます。生物季節現象を観測する目的は、生物に及ぼす気象の影響を知るとともに、その観測結果から季節の遅れや進み具合、気候の違いを総合的に判断するためです。また、生物季節現象を過去にさかのぼって解析すると過去の気象状況を推定することができます。例えば、年輪などから過去の気温の変化を調べられます。

 秋に、フランスから輸入される新酒のブドウ酒ボジョレが話題になりますが、今年(2005年)のフランス南東部はブドウの成長期に暑く、成熟期に涼しかったため、収穫は前年よりも1週間早く、9月5日に始まったとのことです。

 ブドウ酒の歴史は古く、フランス・ブルゴーニュ地方には、少なくとも13世紀前半からブドウ(品種「ピノ・ノワール」)の収穫日についての公式記録が、教会と市の文書館に残されています。このブドウの収穫日の記録をもとに、1370年から2003年までの633年間の気温の変化を調べた結果が科学雑誌ネーチャーに報告されました。ちなみに、1370年は、フランス王国の王位継承をめぐる百年戦争(1337-1453年)の時代で、日本では、金閣寺を建立した足利義満が3代将軍(在位1368- 1394年)であった頃です。

 研究グループは、「ピノ・ノワール」の歴史的な観測結果を生物気候学モデルに当てはめてブルゴーニュ地方の気温を推定しました。その結果、1960-1989年の気温を基準とすると、1380年代と1420年代は暖かい期間で、その後1430年代の半ばから1450年代の終わりまでは涼しい期間でした。1520年代も暖かく、1630年〜1680年の間は特に暑く20世紀後半と同じくらいでした。1750年〜1970年代までは涼しい時期でした。

 2003年のフランスの夏の気温は全調査期間で一番高く、基準気温(1960-1989年)と比べて+5.86℃でした。しかしながら、全調査期間において2番目に気温が高かったのは1523年の+4.10℃でした。近年、暑い夏が続いていますが、1520年代や1630-1680年頃も今と同じで暑かったようです。

 以上のように、ブドウの収穫日から過去のヨーロッパの気温の変化をたどることができました。約600年の間、気温は大きく変化していますが、移動できない果樹は、環境変化にうまく適応して生存しているようです。家の周りの果物の収穫日と気温との関係を調べてみてください。果物はいつが美味しいか分かると思います。

【文献】
Chuine, I., et al.: Historical phenology: Grape ripening as a past climate indicator. Nature. 432: 289-290. (2004) [doi: 10.1038/432289a]




□ ブドウの品種「ピノ・ノワール(Pinot Noir)」

 フランス・ブルゴーニュ地方独特の赤ワイン用ブドウです。中世のころより高貴なワイン原料として使われてきました。高級ワインの「ロマネコンティ」の原料としても知られています。

「ピノ・ノワール」の写真は下記のサイトで見ることができます。
http://www.winepros.org/wine101/grape_profiles/pinot.htm


(2005.12.27記)

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