毎日くだもの200グラムメールマガジン
□■□ くだもの&健康ニュース Vol.33 ■□■ 2012年10月19日(金)配信
みなさん、こんにちは! 今週は、リンゴの特集です。 1日1個のリンゴで医者いらずの科学的証拠が明らかに ───────────────────────────── 毎日くだもの200グラム以上食べましょう! 公式ホームページは下記です。
http://www.kudamono200.or.jp ──────────────────────────────
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本日のメニュ−
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・ 季節の便り ・ くだものレシピ:リンゴ ・ くだもの広場:国産果物の生産が減っているとのことですが、 どのくらい減っているんですか。 ・ 文献紹介:1日1個のリンゴで医者いらずの科学的証拠 ・ 花実好きの家庭果樹だより:柿 ・ 文学の中の果物:北海道に就いての印象(有島武郎) ・ くだものいちば ・ くだもの豆知識:ニュートンとリンゴ ・ 科学ニュース:山中伸弥教授ノーベル医学・生理学賞受賞 ・ 読者から:果物中のポリフェノールは加熱など調理でどうなりますか。 ・ 編集部より
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■ 季節の便り
鵙(もず)鳴て北海の林檎到来す
− 正岡子規
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■ くだものレシピ:リンゴ
○ スモークサーモンとりんごのオードブル
おしゃれで、ワインを飲みたくなるおつまみです。
材料
(2人分) リンゴ 1/4個、スモークサーモン 5、6枚、レモン汁 1/4個分、 チーズ 適宜、チコリ 1/2株、マスタード
大さい1/2杯、など
作り方とできあがりの写真は下記のサイトにあります。
http://cookpad.com/recipe/309821
○ 豚肉の林檎ロール煮
簡単だけど、手抜きに見えない! リンゴがトロリと優しい味です
材料(4人分) リンゴ
1個、豚もも薄切り肉 8枚、玉ねぎ 1個、しめじ 1房、ト マトジュース 200cc、コンソメ 2個、塩こしょう
少々
作り方とできあがりの写真は下記のサイトにあります。
http://cookpad.com/recipe/1972564
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■ くだもの広場:国産果物の生産が減っているとのことですが、 どのくらい減っているんですか。
勉強熱心で果物が大好きなミカさんが、何か聞きたそうに博士の ところにやって来ました。
ミカ:こんにちは。前に、日本の果物の生産が減っていると聞きま したが、どのくらい減っているんですか。 博士:こんにちは。食料需給表の累年統計で、直近の22年産と過去 の最大年とを比較すると、果実全体では、過去の最大年であ る昭和54年の半分以下の43%だよ。主な果実では、みかんが 昭和50年の21%、りんごが38年の69%、なしが52年の54%、 かきが42年の38%、ぶどうが54年の53%、ももが43年の46% だね。
ミカ:みかんの減り方がすごいんですね。 博士:そうだね。30年余の間に5分の1に減少したんだからね。 ミカ:みかんは、日本人で、好きな人の割合が一番多い果物と聞き ましたが、どうしてそんなに減ったんですか。 博士:みかんは、高度経済成長期に、需要の増加を見込んで、大増 産したんだね。でも、過剰になった途端に価格が暴落して、 生産しても所得が得られない価格になって、現在では、大幅 に生産が減っているんだよ。 ミカ:りんごは69%だから、そんなに減っていないんですね。 博士:そうだね。りんごは、ほとんど増産されていないんだ。でも、 古い品種は飽きられてどんどん新品種に変わって来ているよ。 だから、消費もそんなに減らなかったのかな。
ミカ:みかんでは、新品種は出ていないんですか。 博士:温州みかんは、種ができないので、突然変異や枝変わりで品 種改良されているから、種子交配によるりんごのようには多 様な品種が作りにくいんだね。でも、オレンジや中晩柑と交 配したものでは、デコポンや清見など美味しいかんきつがた くさん作られているよ。これらは、なつみかんやネーブルオ レンジ以外の区分で「その他の柑橘」と呼ばれて、高度経済 成長期前に比べて5倍以上に増加しているよ。
ミカ:生産が増えている国産果物はほかに何がありますか。 博士:うめが健康志向もあり2倍、さくらんぼが雨よけ栽培や保冷輸 送の普及もあって3倍に増え、それに、その後に栽培されたキウ イフルーツぐらいかな。ぶどうとなしは同じくらいだね。 ミカ:高度経済成長以降、思った程、国産果物の需要は増えなかっ
たんですね。 博士:一時期は増えたんだけど、他の嗜好品が豊富になったことや、 バナナの消費量がみかんを上回るなど、海外から種々の果実 が入ってきて、国産果実の需要が伸び悩んだんだろうね。
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■ 文献紹介:1日1個のリンゴで医者いらずの科学的証拠
アメリカ、オハイオ大学の研究チームは、1日1個のリンゴで動 脈硬化、心血管疾患の原因である酸化型LDL-コレステロールが大幅 に減少するが、リンゴポリフェノールサプリメントの効果はリンゴ そのものには及ばないと、プレスリリースを行うとともに、「機能 性食品雑誌」のオンライン版で発表しました。全文の印刷版はこれ からです。
LDL-コレステロールが活性酸素によって酸化されて、酸化型LDL- コレステロールができると、血管壁を損傷し、血管拡張作用を阻害 すると考えられています。さらに、酸化型LDL-コレステロールが血 管壁に沈着するとアテローム性動脈硬化を引き起こし、心血管疾患 の原因となります。
研究に参加した被験者は、40-60歳で非喫煙者、かつリンゴを食 べる頻度が月2回未満の人を3群に分け、4週間毎日、次のものを摂 取してもらいました。1)リンゴ摂取群は、大きめのリンゴ1個を 摂取。2)サプリメント摂取群は、リンゴから抽出したポリフェノー ル(194mg:リンゴ1個相当)をカプセルにしたものを摂取。3)プ ラセボ対照群は、ポリフェノールを含まないプラセボ・カプセルを 摂取してもらいました。
研究の結果、リンゴ摂取群では酸化型LDL-コレステロールの血液 中の濃度が約40%も減少しました。サプリメント摂取群でも減少が 認められましたが、リンゴ摂取群には及びませんでした。プラセボ 対照群では、実験開始前と同じでした。
リンゴ摂取群とサプリメント摂取群の効果の差について、研究者 らは、リンゴに含まれる様々な成分が相乗的に働き、抗酸化効果が 高まったためと考察しています。
さらに、今回の実験結果は、これまでに行われたうこんの色素の クルクミンなどの香辛料や緑茶、トマトの抽出物など様々な抗酸化 物質による酸化型LDL-コレステロールの低下効果よりも、リンゴの 効果は高いと、研究者らは述べています。
【文献】 Zhao,
S. et al.: Intakes of apples or apple polyphenols decease plasma values for
oxidized low-density lipoprotein/beta2-glycoprotein I complex. J. Funct.
Foods, Online Sep. 29
(2012) [doi.org/10.1016/j.jff.2012.08.010]
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■ 花実好きの家庭果樹だより:柿
柿が色づき始めました。今年は、農薬散布の不手際で、ヘタムシ の被害にあいほとんどが落果してしまいました。
わずかに残っている果実の写真は下記のサイトにあります。
http://www.kudamononet.com/kudamono200/back_number/K&K033phto1.html 栽培管理の難しさを痛感しています。(花実好き)
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■ 文学の中の果物:北海道に就いての印象(有島武郎)
私が学生々活をしていた頃には、米国風な広々とした札幌の道路 のこゝかしこに林檎園があった。そこには屹度小さな小屋があって、 誰でも五六銭を手にしてゆくと、二三人では喰い切れない程の林檎 を、枝からもぎって籃に入れて持って来て喰べさせてくれた。白い 粉の吹いたまゝな皮を衣物で押し拭って、丸かじりにしたその味は 忘れられない。春になってそれらの園に林檎の花が一時に開くその しみ/″\とした感じも忘れることが出来ない。
何処となく荒涼とした粗野な自由な感じ、それは生面の人を威脅 するものではあるかも知れないけれども、住み慣れたものには捨て 難い蠱惑だ。あすこに住まっていると自分というものがはっきりし て来るかに思われる。艱難に対しての或る勇気が生れ出て来る。 銘々が銘々の仕事を独力でやって行くのに或る促進を受ける。
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■ くだものいちば
今回は札幌市中央卸売市場に入荷している果物について紹介しま す。取扱量の多い果物は、リンゴ、カキ、メロン、ミカン、ナシ、 ブドウ、バナナなどです。
リンゴ(つがる、など)は北海道、青森産です。
カキ(刀根早生、など)は和歌山、奈良産などです。
ウンシュウミカンは和歌山、愛媛、熊本産などです。 レモン、バレンシアオレンジはアメリカ産です。 グレープフルーツは南アフリカ産です。
ニホンナシ(豊水、新高、など)は秋田、新潟、茨城産などです。 セイヨウナシ(ラフランス)は山形、長野産です。
ブドウ(巨峰、キャンベルアーリー、ナイアガラ、など)は長野、 福島、北海道産です。プルーンは北海道産です。
イチゴはアメリカ産です。
メロン(赤肉)は北海道産です。
バナナはフィリピン、エクアドル産です。パイナップルはフィリピ ン産です。キウイフルーツはニュージーランド産です。
「くだものいちば」は青果物市況情報を参考に作成しています。
https://www.seisen.maff.go.jp/seisen/bs04b040md001/BS04B040UC010SC999-Evt001.do
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■ くだもの豆知識:ニュートンとリンゴ
2010年5月16日、アメリカ、フロリダ州にあるケネディ宇宙セン ターからスペースシャトル「アトランテイス」は、イギリス王立協 会から寄贈されたニュートンのリンゴの木を積載して宇宙へ飛びた ちました。このミッションSTS-132を担うのはギリス生まれのピアース・ セラーズ宇宙飛行士です。
アイザック、ニュートンは、1643年イギリスのリンカンシャー州 の東海岸に近いWoolsthorpe村で生まれました。1687年に著書「プ リンキピア」で万有引力の法則を発表しました。
万有引力の法則とは、すべての物体間に普遍的に作用する引力に ついての法則です。大きさは二つの物体の質量の積に比例し、距離 の2乗に反比例します。
自宅の庭のいすに座っているときに、リンゴが落ちるのをみてこ の法則を発見したとの逸話があります。この逸話は、1727年に亡く なったあとに書かれた伝記で初めて記述されました。そのため、本 当のことかは分かりません。
ただ、ニュートンの自宅には「フラワー・オブ・ケント」と呼ば れるリンゴの品種が植えられており、ニュートンがリンゴの木の植 えられている庭の椅子に座っていたことはたしかのようです。
さて、宇宙では、ニュートンのリンゴの木は、空間を漂い、Wool sthorpe村のリンゴの果実のようには落下しません。ただし、長い 時間をかければ、地球に引かれてやはり落下します。
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■ 科学ニュース:山中伸弥教授ノーベル医学・生理学賞受賞
スウェーデンのカロリンスカ研究所は、2012年のノーベル生理 学・医学賞を、再生医療の実現につながるiPS細胞を初めて作製し た京都大学教授の山中伸弥iPS細胞研究所長と、イギリスケンブリ ッジ大学のジョン・ガードン名誉教授に贈ることを発表しました。
「くだもの&健康ニュース」では、新聞やテレビと違った視点か ら、山中教授受賞のニュースをお伝えします。
受賞の知らせは、下記サイトにある山中教授の写真の下にあるス タートボタンを押すと聞くことが出来ます。
電話のベルが鳴り、ノーベル賞受賞を伝えるアダム・スミスさん の山中教授への問いかけから始まります。
http://www.nobelprize.org/
インタビューのタイトルは 「My
goal, all my life, is to bring this stem cell technolog y to the bedside, to
patients, to clinics ..."」です。
Listen to an interview with Shinya Yamanaka
(5:44): (訳)山中伸弥氏のインタビューを聞く(5:44) →この下のボタンを押してください。
山中教授は2006年、マウスの皮膚細胞に4種類の遺伝子を導入す ることで、あらゆる組織や臓器に分化する能力と高い増殖能力を持 つ人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作り出しました。また、2007年 には人間でも同様のiPS細胞づくりに成功しました。
下記のサイトに受賞理由のイメージ図が掲載されています。
http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/20 12/med_image_press_eng.pdf
山中教授は受賞後のインタビューで「1回成功するためには、9 回ぐらい失敗しないと幸運は来ない。若い皆さんには、いっぱい失 敗してほしい」と呼びかけました。
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■ 読者から:果物中のポリフェノールは加熱など調理でどうなりますか。
こんにちは、「文学の中の果物」を楽しみに読んでます。ポリフ ェノールは健康に良いようですが、加熱など調理中にどのくらい失 われてしまうのですか。また、自家製のジュースの場合はどうです か。教えてください。(メルマガネーム:北海道、万年文学青年)
【編集部より】
メールありがとうございました。 果物などに豊富に含まれているポリフェノールは、活性酸素の除 去に役立つと考えられています。一般に、ポリフェノールは熱に強 いことが知られています。たとえば、リンゴやタマネギに含まれる 黄色の色素「ケルセチン」(フラボノイドの一種)は、タマネギを 40分間炒めてもほとんど減少しないと報告されています(文献1)。
ただし、フラボノイドの多くは糖と結合して水に溶けやすい形で 果物などに存在するため、煮ると煮汁中に溶け出しますが、煮汁中 には残っていることが分かっています(文献1,2)。 従って、自宅で、そのままジュースにして飲む場合や煮汁も一緒 に食するコンポートでは、ポリフェノールの量の変化をあまり気に する必要はありません。
皆様からのメールをお待ちしています。投稿アドレスは下記です。
mainitikudamono@gmail.com
【文献】 1)
Ioku, K. et al. : Various cooking methods and the flavonoid content in
onion. J. Nutr. Sci. Vitaminol. 47: 78-83. (2001)
2) Gil, M.I. et al.:
Effect of postharvest storage and processing on the antioxidant constituents
(flavonoids and vitamin C) of fresh-cut spinach. J. Agric. Food Chem. 47:
2213-2217. (1999)
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編集部より
スウェーデンのカロリンスカ研究所のノーベル賞のホームページ はいかがでしたか。googleの翻訳を使えば、簡単に日本語に変換さ れます。山中教授の「失敗を恐れるな」との言葉は、若い人だけで なく、私たちにも通じる普遍的な言葉だと思いました。(tnk)
昭和36年の農業基本法で選択的拡大を図った品目について、平成 22年の生産量を昭和35年と比較してみると、鶏肉が14倍、豚肉が8.6 倍、牛乳・乳製品が3.9倍、鶏卵が3.6倍と大きく増加していますが、 野菜は99.9%、果実は88.8%と伸び悩んでいます。果物は、畜産物 ほどには食生活の洋風化の影響を受けなかったようです。(HK)
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